紙束

2020/12/28

朝、山口にいるサンタさんからプレゼントを受け取った。私にはお互いを狂人人(きょじんちゅ)と呼び合う友人がいて、彼女から小包が届いたのだ。届いたのは朝の9時ごろで、日本郵便のめがねのお兄さんが届けてくれた。わくわくしながら小包を抱えて部屋に持ち帰り、ガムテープを剥がして中身を覗き込んだ瞬間「サンタさんや!!!!」と思わず声が出た。私がよろこぶであろう様々なものがたくさん詰め込まれており、配達という受け取り方も相まって、クリスマスの朝に「サンタが来た!」とはしゃいだ子どもの頃の気持ちを少し思い出した。大人になってからのクリスマスはほぼ毎年ただの平日か休日だったし、友人とクリスマスプレゼント交換をしたときだってこんなにわくわくした気持ちになることはなかった。考えてみればそれも自然なことで、プレゼント交換のプレゼントを選ぶとき、私たちは必ず「誰に当たってもいい」ようなものを選ぶ。入浴剤とかちょっといい調味料とかハンドクリームとか、そういうもの。でも、我が友人山口の狂人人は私がよろこびそうなものや、彼女が私にあげたいもの、を送ってくれた。送られてきたものすべて、私のことを考えながら選んでくれたんだろうなと思うものばかりで、そんな色とりどりの品々が小包にぎゅっと詰まって送られてきたのだ。それも小包で遠いところから。これはどう考えてもサンタの仕業だ。私の心が小躍りするのも無理はない。私めがけてやってきてくれたサンタさん。

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黒くてつやつやなのは見た目に反してすごく軽い。後で電話したときに狂人人は「これを午睡にあげたいとずっと思ってたんだよね〜」と言っていた。ずっと思っていてくれてありがとう。

もらったプレゼントがとてもうれしかったので、お礼の気持ちを伝えるために年賀状を送ることを思いついた。いい計画はすぐに実行せずにはいられない、そして何日かかけてじっくり遂行するということができない質なので、その時点でその日の目標は「今日中に狂人人に年賀状を出す」になった。家には切手もはがきも何もないので、一番近い都会駅に出かけて調達することにした。

送るはがきには少し考えがあって、以前LOFTでいろんな色の画用紙がいろんなサイズで売られているのを見かけたときに(手紙を送る機会があればこの中から選んで狂人人に送ろう)と思ったことがあったので、はがきサイズの画用紙をLOFTで手に入れることにした(日本の郵便で送れるのは官製はがきだけではない。規定に則ってさえいれば画用紙でも問題ない。人生のある段階まで私はこれを知らなかった。確かそれを知ったのも狂人人との会話がきっかけだった気がする)。LOFTで売られていた画用紙の色は様々だったが、全てくすんでいたり、柔らかだったりして、それぞれに「桜貝色」や「うす浅葱色」みたいな名前がついていた。色とりどりの画用紙(それもどれも大層魅力的な色味)の前でどの色にしようかと散々悩んだ結果、私が選んだのは「白」だった。考えてみれば今年は丑年なのだ…。牛は白色と黒色の動物なのだ…。白を買って、黒いサインペンと差し色にオレンジを使って牛を描き、シンプルで潔い年賀状にすることにした。きれいな色の画用紙を送るのはまたの機会に持ち越し。白のはがきサイズの画用紙3枚と、黒とオレンジのサインペンを購入してLOFTを後にした。そのまま、ドトールに入って年賀状作成を始めた。先述したように、私は計画を即実行即完了したい質なので、一度帰宅せず、はがき購入からポストインまで一外出で収めようと思っていた。ドトールのカウンター席に落ち着き、まずデザインから考える。最初はディックブルーナの牛を参考にかわいい感じのイラストを描こうかな〜と思っていたのだが、「牛 イラスト」で検索して出てきたピカソの牛にぐっと心を掴まれてしまったので、そのピカソのドローイングを模写することにした。3枚の画用紙それぞれに違うピカソの牛を描いた(のちに一番手前のドローイングは豚だったことが判明した)。

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その後は本屋に行って、フェミニズムの本を2冊買った。「キングコングセオリー」という本の書き出しに心が震えたので、これは買わなきゃうそだと思って買う予定じゃなかったけど買った。ちょうど乳液がほしかったので、無印に行って、乳液購入後もなんとなく店内をふらふらと歩いていたら「らくがき帳」を見つけてしまった。私は考え事をしたいとき、机に向かってひたすら思考の赴くままに日記を書いたりするのだが、それにはまあまあなエネルギーと、えいやっという踏ん切りがいる。そうではなくて、気軽にいつでも「記録」できるものを、部屋のすぐ手の届く位置に置いておくのがいいんじゃないかと思った。らくがき帳の価格は90円。安価だから扱いも気楽でいい。いつでもいいし、何を書いても描いてもいい(書かなくても描かなくてもいい)。コーヒーをこぼしても醤油をこぼしてもご飯粒をつけても気にならない。食事するみたいに日常的に書くためのものがたった90円で手に入る。これは私にとってかなり魅力的だ。他にも絶妙な色のサインペンがあったので3本買ってしまった。一度並んだレジにもう一度並び直すのは少し気恥ずかしがったやむを得ない。

その後ブックオフに行って、読みたかった筒井康隆の「笑うな」と、恋人が読みたいと言っていて私も読みたくなった「残像に口紅を」を見つけてしまったので買った。最寄り駅に着いたのが17時前で、郵便局がまだ開いていたから、切手を3枚買った。結局この日は、はがき3枚、単行本2冊、文庫本2冊、らくがき帳1冊、切手3枚、つまりは紙(束)でかばんをぎゅうぎゅうにして帰宅した。言うまでもなく、かばんはずっしり重かった。文字が書いてある紙束も、これから書ける紙束も、書いて誰かに送れる紙も、私は全部、とてもすきだ。

 

ちなみに:

狂人人に似てるキーホルダー、つけてるよの写真

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